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JPモルガンCEO、銀行危機「終わっていない…(写真=ロイター) - 日本経済新聞

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【ニューヨーク=大島有美子】米銀大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は4日、年次報告書に添えた株主への手紙で、3月に起きた銀行破綻や経営危機の問題は「まだ終わっていない」と述べた。危機が去っても「反動が何年も続く」とみる。米連邦議会で強まる米銀の規制強化論については「モグラたたき的で政治的な意図に基づく対応は避けるべきだ」とけん制した。

米西海岸の地銀シリコンバレーバンク(SVB)は、急激な預金流出に見舞われ3月10日に経営破綻した。経営危機に陥ったスイスのクレディ・スイス・グループはUBSが救済買収を決めた。ダイモン氏は一連の事象が「単に規制要件を満たすだけでは不十分だと示している。多くのリスクは目に見えないところにある」と指摘した。

SVBは預金の運用先が長期債券に偏っていたため、金利上昇で債券価格が下落し含み損が膨らんだ。ダイモン氏はこうしたリスクは周知の事実だったとした。

一方、未知のリスクは「少数のベンチャーキャピタル(VC)がSVBの3万5000超の法人顧客を一斉に動かし、預金も一緒に動いてしまうことだった」と指摘した。SVBをめぐっては、同行の経営を不安視した有力VCが投資先に預金を引き出すようすすめ、短期間での破綻につながった経緯がある。

一部の民主党議員は、トランプ前政権の規制緩和で中堅以下の銀行のリスク把握が不十分になったと主張する。バイデン米大統領も規制強化を金融当局に要請した。

これに対し、ダイモン氏は「(トランプ前政権下の)規制変更によって展開に変化が生じたとは考えにくい」と異論を唱えた。「すべての失敗を排除するのではなく、失敗の可能性と伝達する確率を減らす規制体系を目指すべきだ」と主張した。

現状の資本規制によって銀行は「安全な国債を保有するよう仕向けられた」。連邦準備制度理事会(FRB)によるストレステストでは「高金利は考慮されていなかった」とも指摘した。

ダイモンCEOは2006年にJPモルガンのCEOに就任した。米大手銀のCEOで唯一、08年のリーマン・ショック前から経営トップに就く。経営危機に陥った金融大手ベア・スターンズの救済買収や、08年に破綻した貯蓄金融機関(S&L)ワシントン・ミューチュアルの買収を指揮した。ダイモン氏は「08年の危機時とは全く違う。今回の危機は金融関係者の数も解決すべき問題もはるかに少ない」と述べた。

3月に米中堅銀ファースト・リパブリック・バンクで預金流出が懸念された際には、JPモルガンなど大手銀11行が預金提供で支援した。まとめ役となったのがダイモン氏とされ、その発言は多くの市場関係者が注目している。

米経済の状況については「かなり良好だ」との認識を示した。今後不況に陥ったとしても「消費者は(08年の危機時より)はるかに良い状況で迎えるだろう」とした。ただ「銀行や他の貸し手が保守的になり、金融環境の引き締めが起きるのは明らかだ」と述べ、警戒を示した。

人工知能(AI)に関しては「驚異的」と言及した。JPモルガンではリスク管理や詐欺防止などで300以上のAI利用を実用化しており「決済と資金移動システム全体でAIが稼働している」。対話型AIの「『ChatGPT』を含む大規模な言語モデルのようなツールを活用し、従業員をAIで補佐し、力を与える新しい方法を考えている」とした。

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