[東京 6日 ロイター] - 三井松島HDや富山第一銀行、住石HDなど、保有銘柄の株価が軒並み上昇し、注目を集める元お笑い芸人の井村俊哉氏(38)が2023年以降、個人投資家からファンド運営に活動の軸足を移す。井村氏はロイターとのインタビューで、今後は個人投資家としては保有銘柄を拡大せず、将来的に「日本の家計に貢献する」ファンドマネジャーとしての歩みに本腰を入れていくと表明した。
<海運・石炭株のきっかけ与えた人物とファンドを準備>
井村銘柄──井村氏が手掛ける株は最近こう呼ばれる。保有が判明しただけで投資家の買い注文が殺到するためだ。本源的な価値が100億円の企業に市場で50億円の金額がついているといった、アルファ(超過収益)のある銘柄を見抜いて集中的に投資する手法に対し、井村氏の実績を知る投資家が瞬時に群がってくる。富山第一銀行、住石HDは保有判明後にストップ高を演じた。
井村氏は2011年に元手100万円で本格的に株式投資を始め、17年には通算運用益が1億円を突破、ここ数年は2倍、3倍と増やし昨年末には55億円に達したという。徹底した調査・分析でアルファのある企業を探し求め、「何度も痛い目に遭ったが、投資をやめようと思ったことは一度もない。生涯投資を続けるのは間違いない」。その生涯投資家をファンド設立という挑戦に駆り立てたのは、自分の投資に「社会的な意味を持たせたい」との思いだと語る。
ファンドの運用を考え始めたのは2019年ごろ。これまでも行動は起こしてきたが、「機が熟した。今年には何らかの動きが出てくる」段階まで来た。井村氏が「個別株に対する造詣の深さで彼以上の人はいない」と評し、海運株や石炭株への投資のきっかけを与えたという人物とともに、投資方針や事業計画を現在策定中だ。初期の段階ではプロ向けに絞る可能性もあるものの、いずれは誰もが資金を投資できるような形で「大きなミッションとして日本の家計に貢献したい」という。
自身の投資資金をファンドに投入することも選択肢として考えており、先々は運用総額10兆円の大型ファンドに育てる青写真まで描く。かつて芸人としての年収が3万円の生活を経験し、個人投資家として次第に頭角を現し、今度は本格的に他人の資金を運用するファンドマネジャーに転身する。立場は変わっても「アルファの獲得にこだわる」姿勢は今後も変わることはない。
<相次ぐ井村銘柄の急騰、一方で感じた「戸惑い」>
井村銘柄の急騰ぶりに、本人は当初「率直に戸惑いを感じた」という。東証上場企業の全開示資料のタイトルをチェックし、変化を探し求めて資料を読み込み、時には取材もして選び抜いた銘柄だが、自身の投資行動自体が株価変動を引き起こしたことを自覚したためだ。
いろいろな思いはあったが、最近は気持ちが固まり、「市場の期待に応える責任感が芽生えた」。その文脈で、投資するだけでなく、企業の投資家向け広報の改善提案などにも取り組む。
<「日本一株式投資に時間を費やしている」と自負>
井村氏の生活は、すべてを投資に捧げていると言っても過言ではない毎日だ。睡眠時間こそ確保するものの、投資に費やすのは十数時間、「心持ちからすると24時間」。投資に打ち込む環境を作ってくれる家族と過ごす時間は「コミュニティーを維持するコスト」と割り切り、土日も調べものなどに没頭する。株式以外に趣味もなく、「時間や熱量だけは負けない。日本一時間を使っているという自負がある」と言い切る。
個人投資家として成功した井村氏だが、生活が派手になったわけではない。芸人時代は昼食にノーブランドの柿の種をつまみ、著書『年収3万円のお笑い芸人でも1億円つくれたお金の増やし方5.0』でコストパフォーマンスのよい「神商品」として挙げた納豆は、いまでもよく口にする。もっとも、最近は時間効率や健康により気を使うようになった。
井村氏の投資哲学を形作り、衝撃を受けた書物として、ベンジャミン・グレアムの『賢明なる投資家』、ウィリアム・J・オニールの『成長株発掘法』、ピーター・リンチの『株で勝つ』を挙げた。自身の銘柄選択はこの3冊でほとんど語れるという。2023年の注目業種では、引き続き石炭と地銀を挙げたほか、グロース(成長)株と一括りにされて昨年に売られながらも、成長力のある銘柄に関心を寄せている。
*インタビューは昨年12月26日に実施しました。
(インタビュアー:内田慎一、勝村麻利子 編集:久保信博)
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