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【消滅 堂島コメ先物市場】㊤鉄壁 農政トライアングル 先物発祥 大阪の敗北 - 産経ニュース

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「世界の先物取引の発祥として誕生したコメ先物の歴史、先人たちの積み重ねてきた努力を思うと残念」

大阪堂島商品取引所の社長、中塚一宏は6日、記者会見で淡々と述べた。不認可は10日ほど前の段階ですでに決定的になっていた。

7月28日、堂島取引所の会議室にそろった取締役たちの顔は一様に紅潮していた。前日、農林水産省からコメ先物取引に関し「(恒久的な取引ができる)本上場は認められない」との意向が伝えられたためだ。

「取引の参加者が少ないとは初めて持ち出してきた話だ」「申請前の打ち合わせでは、何も問題点を指摘してこなかったのに」。焦点は現在の試験上場を延長するかどうか。本上場が不認可となった場合、試験上場も断念すればコメ先物取引は終わる。

「本上場以外はあり得ない」

出席者は声をそろえ、試験上場の延長はしない方針を決めた。結果的に事実上の上場廃止決定ともなった。

1730年、江戸幕府公認で大阪に創設された堂島米市場は世界初の先物取引所とされる。昭和14年に途絶えたが、平成23年、試験上場(期限2年)という形で72年ぶりに復活した。

23年は、コメ価格の指標となる取引が行われてきた全国米穀取引・価格形成センターが解散した年だ。「コメの流通価格に農協(JA)グループの力が大きくなる」との声もあり、価格指標を示す場としての復活だった。(敬称略)

コメは、生産者から委託されたJAが卸・小売りに販売する割合が約4割と最も多く、生産者による卸・小売りへの直売(約3割)が続く。いずれも相対(あいたい)取引(当事者同士の取引)で価格が決まる。「公開の市場なら実需に基づいた透明性のある価格提示が可能」と堂島側は訴える。事前に決めた価格で1年先などの売買を契約するため、価格の変動リスクを抑えることも可能とした。

しかし、農水省は本上場を認めなかった。条件とされた取引量を堂島側がクリアしても、今度は「参加者が増えていない」と態度を硬化させた。社長の中塚一宏は「ゴールポストを恣意(しい)的に動かされた」と憤る。

■ ■

なぜ本上場は認められないのか。戦後の農政を牽引(けんいん)してきた自民、JAの意向にカギがある。

JA全中は当初から、コメ先物市場に警戒を強めていた。平成25年には当時会長の万歳(ばんざい)章の談話で、先物取引を「投機的なマネーゲーム」とし「上場廃止に向けた運動を展開していく」と強硬論を唱えた。

農水省のOBでキヤノングローバル戦略研究所の研究主幹、山下一仁は「流通量をコントロールして米価と販売手数料を維持したいJAにとって、独自に価格が形成される先物市場は認められない存在」とみる。

堂島が本上場を申請した7月、JA全中の会長、中家徹は「農家やJAのためにならないことは、すべきではない」と明言。与党の議論を注視する、と自民にクギを刺した。

JAが支持基盤の自民も呼応する。8月4日、翌日に堂島への意見聴取を控えた農水省に「厳正に判断すること」と申し入れ、事実上の不認可を迫った。

自民の農水族の一人は「上場なんか認められるわけがない。コメは日本の主食。投資と同じように考えるなんて」と強調。衆院選を控えていることも、強硬姿勢に拍車をかけた。

政策形成に影響を及ぼす与党。農水省がその意向に反した政策は取りにくいとみる向きは強い。山下は「自民、JA全中、農水省の3者による農政トライアングルを突き崩せなかった」と分析する。

■ ■

堂島の事実上の筆頭株主であるSBIホールディングス社長の北尾吉孝は「(コメ先物を否定するなら)金融も経済も知らない、世界を相手にしない集団でしかない」と農水族を批判する。世界の金融市場は、先物をはじめとしたデリバティブ(金融派生商品)が主要な役割を果たしているとの立場からだ。

堂島の幹部は「自民の族議員が決める話ではない。農水省が決める話なのに」と悔しがる。

8月5日、堂島にとって最後の説得の機会となる意見聴取が開かれたが、結論は変わらなかった。業界のトライアングルに風穴を開けられないまま、コメ先物は終幕する。(敬称略)

国内唯一のコメ先物取引を手掛けてきた大阪堂島商品取引所。コメ先物は何につまずいたのか、今後大阪が目指す「国際金融都市構想」にどんな影響を及ぼすのか、検証する。

コメ先物取引 半年先など将来の決済月に、あらかじめ決めた価格でコメの売買を約束する取引。豊作や凶作で価格が大きく変動しても、事前に決めた価格で取引できるため価格変動リスクを抑えることも可能になる。コメの生産者や流通業者に将来値下がりの心配があるなら、先物で事前に売っておき損失を回避する手段にも使える。一方、投資家にとっては、値上がりすると見込んだときに購入し、値上がり益を求めることができる。投機の対象になることに批判もある。

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