月額2980円均一で20GBの通信量が使える「ahamo」で一躍話題となったNTTドコモ。2020年12月には従来プランの見直しもすると打ち出していましたが、ahamoが大きなインパクトを残しただけに、その内容に大きな注目が集まっていました。
そして2020年12月18日、ついに従来プランの見直し策が発表されたのですが、内容を見て「悪くはないけどahamoほどのインパクトはないな……」と感じた人が多かったのではないでしょうか。その理由は、多くの人が注目したであろう大容量プラン「5Gギガホ」「ギガホ」のリニューアル版となる「5Gギガホ プレミア」「ギガホ プレミア」にあるといえます。
その内容を簡単に振り返りますと、両プランはともに「5Gギガホ」「ギガホ」向けにキャンペーンとして提供されていたデータ通信量の増量が正式に適用されたもの。ギガホ プレミアは60GBの高速データ通信が利用可能、5Gギガホ プレミアは使い放題となっています。
それでいて5Gギガホ プレミアは月額1000円、ギガホ プレミアは月額600円の値下げがなされ、それぞれ月額6650円、6550円での利用が可能。また他社の大容量プランと同じように、月当たりのデータ通信量が3GB以下の場合は1500円の値引きがなされる仕組みも用意されています。
ですが両プランはともに、料金プランが複雑だと感じさせる要素の1つとなっている従来の割引の仕組みがそのまま維持されていました。「1年間限定」など期間限定の割引こそ存在しないものの、家族契約の人数によって値引きがなされる「みんなドコモ割」や、固定ブロードバンド回線の契約とセットで値引きがなされる「ドコモ光セット割」はしっかり残っています。
確かにデータ通信の使い放題が正式なものとなったり、月額1000円値引きされたりしている点は消費者から見ればメリットです。ただahamoでは割引を一切なくした潔さで人気となっていただけに、なぜahamoと同様、複雑な割引の完全撤廃に踏み切らなかったのか?という点に不満を覚えた人も少なからずいたのではないでしょうか。
その理由は従来の枠組みを維持する必要があるユーザーがいるため、ということに尽きるのではないでしょうか。それはNTTドコモが今回発表したもう1つの料金プラン「はじめてスマホプラン」から見えてきます。
こちらはフィーチャーフォンを主体とした、3G回線契約者が4Gや5Gの回線に乗り換えることで契約できる料金プラン。月額1480円で1GBのデータ通信量と1回当たり5分間の無料通話ができ、「dカードお支払割」と「はじめてスマホ割」の適用により、1年間は月額980円で利用できるとされています。
実はこのプランは、KDDIのauブランドで提供されている「スマホスタートプラン」や、ソフトバンクの「スマホデビュープラン」に非常に近く、他社の後追いともいえるプランでもあります。つまりNTTドコモの3G契約者がフィーチャーフォンからスマートフォンに乗り換える際、他社のそうしたプランに魅力を感じて流出してしまう傾向が強かったからこそ、はじめてスマホプランを提供するに至ったといえるでしょう。
このことはそれだけNTTドコモが3Gの利用者、ひいてはスマートフォン初心者やその予備軍を抱えていることでもあり、そうした人たちにとってニーズが非常に高いのが、ドコモショップによる手厚いサポートです。ahamoがドコモショップでのサポートを丸ごとカットしたことで低価格を実現できたことからも分かるように、ショップでのサポートにかかるコストは非常にお金がかかるものですが、スマートフォン初心者のサポートは国も求めているものであるため、そう容易になくすことはできません。
スマートフォンに慣れていない人を支える上ではドコモショップの運営を重視する必要があり、そのためにはサポートコストをカットして大胆な値引きをすることはできないと判断。既存の枠組みを残しながらも、可能な限り料金を引き下げるという今回の結論に至ったのではないでしょうか。
実質的に武田良太総務大臣の鶴の一声で、ahamoがサブブランドではなくメインブランドの料金プランとなってしまったことを振り返ると、大臣の意向次第ではさらなる対応を迫られる可能性があるかもしれません。ですが武田大臣が今回の同社の施策に苦言を呈しなかった場合、5Gギガホ プレミアをはじめとした携帯3社の大容量プランの競争はあまり過激にはならない可能性が高のではないかと筆者は見ます。
すでにKDDIはauブランドで(テザリングの通信量に制約があるとはいえ)データ通信が使い放題の「データMAX 5G」を提供していますし、ソフトバンクも2020年11月4日の決算説明会で、代表取締役社長の宮内兼氏が5Gで「無制限を使いやすい形でやる」と話しており、使い放題プランの提供は既定路線ともいえます。
もちろん、今回のNTTドコモの動きを受けて多少の見直しはなされると見られ、とりわけ期間限定の割引は大幅な見直しがなされることでしょう。しかしながら5Gギガホ プレミアムも家族での割引の枠組みに大きな違いがなかったことを考えると、2社の対応は微修正にとどまる可能性が高いのではないでしょうか。
それゆえ2021年の料金競争の中心となるのは、やはりahamoが打ち出した「若者向け」「オンライン」「シンプル」「低価格」といったコンセプトを持つ料金プランと考えられます。KDDIはMVNOとして設立した「KDDI Digital Life」、ソフトバンクは傘下の「LINEモバイル」が比較的近いコンセプトを持つだけに、その辺りを対抗馬としてぶつけてくる可能性が高そうですが、その場合「UQ mobile」「ワイモバイル」といったサブブランドの位置付けをどうしていくのか?という点も気になるところです。
これだけ大きな動きが待っていることを考えると、菅政権の動向も含め、2021年も引き続き携帯電話料金の動向に大きな注目が集まることは間違いないでしょう。筆者としては料金よりも5Gにもっと注目が集まってほしいところではあるのですが……。
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